「他店で働く同僚は『ベア(ベースアップ)で給料が上がった』と喜んでいるのに、なぜうちの薬局は基本給が据え置きのままなんだろう……」 「毎月のように色んなものが値上がりして生活が大変なのに、会社は現場の苦しさを分かってくれているのだろうか……」
日々のバタバタとした調剤業務や受付、レセコン入力の激務をこなす中、そんな割り切れない思いを抱えていませんか?
今、医療・調剤業界の現場スタッフ(薬剤師・薬局事務)の間で、大きな格差と不満の種になっているのが「調剤ベースアップ評価料」をめぐる各薬局の対応です。
国が「現場で働くスタッフの給料を底上げしなさい」とわざわざ用意してくれた仕組みであるにもかかわらず、驚くべきことに、この評価料を「あえて算定しない」選択をしている薬局が一定数存在します。
なぜ、取るのが当たり前のような流れの中で、算定を見送る薬局があるのでしょうか?この記事では、2026年現在の調剤報酬改定のリアルな動きを踏まえ、スタッフへの還元を渋る経営陣のドロドロとした裏事情と、従業員をコストとしか見ない「ブラック・泥舟薬局」の危険なサインを現場目線で暴露します。
1. 2026年からは「4点」、2027年からは「8点」へ。国が用意した賃上げのロードマップ
そもそも「調剤ベースアップ評価料」とは、近年の深刻な物価高騰や他業界の賃上げラッシュに対抗するため、国が主導して医療従事者の処遇改善を行うために新設した診療報酬です。
現場の確実な賃上げを支えるため、段階的に点数が引き上げられる設計がなされており、直近のスケジュールは以下のようになっています。
- 2026年(令和8年)6月からは【4点】(処方箋受付1回につき)
- 2027年(令和9年)6月からは【8点】に倍増!
国は「薬剤師3.2%、事務職員5.7%」のベースアップを明確な目標として掲げ、そのための財源を患者さんの窓口負担(数十円程度)という形で薬局に与えてくれているのです。
しかも、この評価料には厳しい鉄のルールがあります。それは、「この評価料で得た収入は、その全額を対象職員の賃上げに充当すること」。つまり、会社が自由に使えるお金ではなく、100%現場で働くあなたたちの給料(基本給や毎月決まって支払われる手当)の引き上げ、およびそれに連動する賞与や社会保険料の会社負担分にしか使えない「ひも付きの財源」なのです。
2. 「物価高騰で大変」なのは同じ。なのに配慮を放棄する経営陣
今、私たちは歴史的な物価高騰の渦中にいます。電気代、ガス代、食品、日用品、ありとあらゆる生活コストが値上がりしています。
薬局の経営側からすれば、「光熱費や調剤資材のコストが上がって、薬局の運営が大変だ」というのは事実でしょう。
しかし、「薬局で働く従業員の生活が大変なこと」も、全く同じ、いやそれ以上ではないでしょうか?
毎月の出費が跳ね上がっている中で、基本給が据えおきのままでは、実質的な「減給」と同じです。会社が経営のやりくりに苦しんでいるのと同時に、現場のスタッフも個人の生活防衛で必死なのです。
だからこそ、国がわざわざ用意してくれた「調剤ベースアップ評価料」を漏れなく申請し、少しでも従業員の給与に上乗せして還元できるよう配慮するのは、会社(経営陣)として当然の社会的責任であり、最低限の義務と言えます。
3. なぜ取らない?経営陣がひた隠す「2つの身勝手なホンネ」
それにもかかわらず、あなたの薬局がこの評価料を算定していないとしたら、その理由はあまりにも絶望的です。経営陣が算定を渋る裏には、スタッフを裏切る「経営の闇」が隠されています。
① 「会社の利益(儲け)」にならないから
前述の通り、この評価料は「全額をスタッフの給与アップに充てる」ことが義務付けられています。つまり、経営者からすれば、どれだけ厚生局への計画書や実績報告書の提出といった面倒な事務作業をこなしても、会社の純利益としては1円も残らないのです。「会社の儲けにならない作業なら、スタッフが生活に困っていてもわざわざやりたくない」という本部の怠慢が、算定見送りの大きな理由です。
② 【最悪のケース】算定できないほど経営が悪化している(泥舟のサイン)
そして最も恐ろしいのが、「ベースアップ評価料を算定したくても、算定できないほど会社に体力が残っていない」というケースです。
ベースアップ評価料による収入は、毎月の処方箋枚数によって細かく変動します。しかし、日本の労働法では、一度引き上げた基本給を会社の都合で引き下げることは極めて困難(不利益変更の禁止)です。 つまり、この評価料を取らない会社は、「もし将来、処方箋が減って評価料の収入が落ちたとき、自腹を切ってスタッフの給料を維持する余裕すら一切ない」と自白しているようなもの。来年、再来年に会社が生き残っているかどうかも怪しい「泥舟薬局」である危険性が極めて高いのです。
スタッフの生活やモチベーションを高めることよりも、自分たちの「事務負担の軽減」や「倒産リスクの回避」を最優先にする。そんな経営陣の元で、安心して働き続けることができるでしょうか?
4. 【逆質問で一発で見抜く】面接で「ベースアップ評価料」を確認すべき理由
もし、今の職場の経営姿勢や将来性に不信感や怒りを覚えたなら、その感覚は100%正しいです。スタッフを大切にせず、いつ沈むかも分からない泥舟に尽くし続ける必要はありません。環境を変えるために、一歩を踏み出しましょう。
そして、次の転職先を選ぶ面接の最後、必ずと言っていいほど「何か質問はありますか?」と逆質問を求められます。そのときこそ、その会社の本質を見極める絶好のチャンスです。
面接官に、こうストレートに質問してみてください。
「御社では、調剤ベースアップ評価料の算定について、現在どのような方針で取り組まれていらっしゃいますか?」
この質問に対する面接官(経営陣や人事担当者)の反応を見るだけで、求人票の綺麗事ではない「従業員に対する会社のスタンス(姿勢)」の一端をまざまざと垣間見ることができます。
- 優良な会社の反応: 「はい、当グループでは〇月から算定を開始し、計画書通りに実施しています。物価高で現場も大変ですから、国が用意してくれた制度は最大限活用してスタッフの生活を守る方針です」と、具体的かつクリーンな回答が返ってきます。ここなら、コンプライアンス意識も経営体力もバッチリです。
- 要注意な会社の反応: 面接官が一瞬嫌な顔をしたり、「あー、あれは手続きが煩雑でね……」「うちは基本給の体系が特殊で見送っているんだよ」などと、言い訳をして濁すケースです。これは「スタッフへの還元よりも社内の事務負担を優先している」、あるいは「基本給を上げたら会社が潰れかねないほど経営が逼迫している」という何よりの証拠です。
この質問を堂々と投げかけることで、あなた自身が「制度を正しく理解し、自分のキャリアや生活を真剣に考えている優秀な人材」であることをアピールしつつ、地雷のブラック薬局を賢く見極めて回避することができるのです。

