パーキンソン病治療薬「ドパコール配合錠」に供給懸念!背景にある薬価制度の課題と「ババ抜き現象」とは?

医療現場での医薬品の供給不安定や限定出荷が叫ばれて久しいですが、今度はパーキンソン病患者にとって命綱とも言える重要な治療薬「レボドパ・カルビドパ配合錠(製品名:ドパコール配合錠)」の供給に黄色信号が灯っています。

富山テレビ(FNNプライムオンライン)が2026年5月28日に報じた内容によると、国内シェアの大部分を担う医薬品メーカー「ダイト」が、制度上の問題(薬価制度の歪み)から製造継続の危機に直面しているとのことです。

なぜダイトのような高いシェアを持つ大手メーカーが、定番の薬を作れなくなってしまうのか。本記事では、報道されたニュースの要点を整理し、背景にある薬価制度の課題や、現場の医療従事者が知っておくべき実態について解説します。

報道の概要:ドパコール配合錠を巡る現状とダイトの悲鳴

今回の供給懸念は、2026年3月の国会(衆院予算委員会)でも取り上げられ、表面化しました。

対象となっている「ドパコール配合錠」は、富山市の医薬品メーカーであるダイトが国内シェアの約75%を担っています。しかし、同社の松森浩士社長は取材に対し、現在の非常に厳しい台所事情を次のように明かしています。

「通常の経済原則が働けば、製造原価に利益を乗せて売るのが当たり前だが、日本の医療用医薬品に関しては薬価制度で全くそういったことが加味されていない。長く使われている薬は基本、薬価改定でどんどん下がり続けていく。その果てにどこかで製造原価を割る現象がどうしても起きてしまう。私はババ抜き現象と呼んでいる。ある程度シェアを持っていて責任を果たしている会社にシェアが乗っかってきて、小さいシェアで採算が悪い会社はどんどんやめていく。ひとつの会社にどんどん負担がかかっていく。ドパコール配合錠の場合は最たるもので、先発品メーカーすらやめていく」 (引用元:富山テレビ/FNNプライムオンライン

報道によると、不採算を理由に他メーカーの撤退が相次いだ結果、現在製造しているのはわずか数社。さらに直近では先発品メーカーも販売を中止するため、残されたダイトのシェアは現在の75%から90%(9割)にまで跳ね上がる可能性があると指摘されています。

薬価制度の歪みが生む「ババ抜き現象」の恐怖

松森社長が「ババ抜き現象」と表現した言葉は、現在の医療用医薬品が置かれている構造的な欠陥を如実に表しています。

1. 需要があるのに価格が下がり続ける仕組み

医療費削減を目的に、日本では毎年のように「薬価改定(引き下げ)」が行われています。 ドパコール配合錠の場合、当初は1錠64円40銭だった薬価が、10年前には11円60銭にまで下がり、現在はなんと7円90銭にまで下落しています。昨今の物価高騰や原材料費の上昇があっても、医療用医薬品は自由に価格転嫁(値上げ)ができないため、長く広く使われている古い薬ほど、製造原価を割りやすくなります。

2. 真面目に供給責任を果たす会社ほど赤字になる

採算が合わなくなった他社が「ババ(赤字製品)」を嫌って次々と製造を中止すると、その分の需要が、最後まで残って供給責任を果たそうとしているメーカーへと一気に集中します。 シェアが9割になれば製造負担や設備投資の負担は増しますが、売れば売るほど赤字が膨らむため、企業の善意や使命感だけで製造を維持するには限界があります。ダイトでも、製造販売する122品目のうちおよそ2割(27品目)が薬価引き下げによって不採算の状態に陥っているといいます。

医療現場・調剤薬局が注視すべき今後のポイント

パーキンソン病は、脳内のドーパミン減少により手足の震えや身体の硬直が起こる進行性の難病です。薬の服用を忘れたり途絶えたりすると、患者は力が入らず動けなくなってしまうため、この薬は文字通りの「ライフライン」です。現場の医療従事者は、今後の動向について以下の点に注意する必要があります。

① 「不採算品再算定」が適用されるかどうか

ダイト側は現在、国に対して、薬価を特例的に引き上げる救済処置である「不採算品再算定」の対象とするよう求めています。これが国に認められ、適切な薬価(製造を継続できる価格)に見直されるかどうかが、今後の安定供給における最大の分岐点となります。

② 残る製造メーカーの動向と流通状況

先発品メーカーの撤退に伴い、各薬局や院内では「どのメーカーのレボドパ・カルビドパ配合錠を採用・発注するか」の再検討を迫られる可能性があります。特定のメーカーに注文が殺到して一時的な限定出荷(出荷調整)が起きないか、卸からの流通情報を小まめにチェックしておくことが推奨されます。

まとめ:薬価制度の見直しは患者の命を守るための急務

今回のパーキンソン病治療薬の供給懸念は、決して一過性の問題ではなく、日本の薬価制度が抱える「氷山の一角」に過ぎません。

慢性期の病気で、患者が一生涯頼り続けなければならない古い薬ほど、今の仕組みでは価格が下がり続け、製造の現場を圧迫していきます。高齢化に伴い、今後さらに患者が増える(パーキンソンパンデミック)と予測される中、薬が届かなくなるという最悪の事態を防がなければなりません。

単なる医療費抑制の視点だけではなく、医療のインフラとして「安定供給に貢献している企業(ダイトなど)が、適切に製造を継続できる制度」への早期の見直しが強く望まれます。

【出典・参考元】

  • 富山テレビ(FNNプライムオンライン)2026年5月28日配信 「難病『パーキンソン病』の治療薬、供給困難の懸念 背景に“薬価制度” メーカーは『安定供給の仕組みを』」 (URL:https://www.fnn.jp/articles/-/1051776
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