鹿児島県の「みなみの薬局」の倒産事例は、抗がん剤を取り扱う薬局が直面する経営の難しさを浮き彫りにしました。特に、「使用頻度が低くても在庫しておかなければならない」「在庫していても患者が必ずその薬局に行くとは限らない」という状況は、薬局経営にとって非常に大きなリスクとなります。
- 高額な薬剤費と資金繰り:
- 抗がん剤は非常に高額なものが多く、在庫を抱えることは薬局にとって大きな経済的負担となります。
- 使用頻度が低い薬剤でも、患者さんのニーズに応えるために在庫を維持する必要があり、資金繰りを圧迫します。
- 在庫管理の複雑さと廃棄ロス:
- 多種多様な抗がん剤を在庫することは、在庫管理を複雑化させ、管理コストを増大させます。
- 患者さんが必ずしもその薬局を利用するとは限らないため、在庫が滞留し、有効期限切れによる廃棄リスクが高まります。
- 経営効率の悪化と機会損失:
- 使用頻度が低い薬剤に資金が滞留することで、経営効率が悪化します。
- 必要な時に必要な薬剤を調達できる体制を維持することが困難になり、患者さんへのサービス低下や機会損失につながる可能性があります。
みなみの薬局の事例から得られる教訓
- 地域医療における役割と経営のバランス:
- 地域のがん患者さんを支えるためには、薬局は必要な薬剤を在庫しておく必要があります。
- しかし、患者さんの選択によって在庫リスクが増大するため、より慎重な在庫管理と経営戦略が求められます。
- 病院との連携強化と情報共有:
- 病院との連携を強化し、薬剤の使用状況や患者さんの動向を把握することで、在庫の最適化を図ることができます。
- 病院と薬局が情報を共有し、協力体制を構築することが不可欠です。
- 広域連携と在庫共有:
- 複数の薬局が連携し、在庫情報を共有することで、リスクを分散することができます。
- 広域的な連携体制を構築し、薬剤の共同購入や在庫共有を行うことが有効です。
- 患者さんへの情報提供と選択肢の提示:
- 患者さんに対して、薬剤の在庫状況や薬局の選択肢を適切に情報提供することで、患者さんの利便性を高めるとともに、薬局の在庫リスクを軽減することができます。
薬局経営における課題と対策
みなみの薬局の事例は、抗がん剤を取り扱う薬局だけでなく、すべての薬局が抱える課題を示唆しています。
- 診療報酬の改定:
- 医療費抑制のための診療報酬の引き下げは、薬局の収益を圧迫しています。
- 競争激化:
- ドラッグストアとの競争や、大手チェーン薬局の進出などにより、競争が激化しています。
- 人材不足:
- 薬剤師不足が深刻化しており、人件費も高騰しています。
- 経営者の高齢化:
- 後継者不足や事業承継の問題も深刻です。
これらの課題に対応するためには、薬局は経営の効率化や多角化、地域医療との連携強化、広域連携の推進など、様々な取り組みを行う必要があります。