はじめに
本ページは、各地方厚生局より公表された令和7年(2025年)における保険医療機関・保険医等の行政処分(指定取消・指定取消相当・登録取消)の確定事例を全国網羅的にまとめたデータベースです。
医療機関や薬局がどのような経緯で個別指導から監査へ移行し、どのような手口や違反行為が一発アウト(指定取消・登録取消)に至るのか、現場の運用管理やコンプライアンス維持、リスクヘッジの参考資料としてご活用ください。
令和7年 全国行政処分・取消相当事例一覧
【R7.2.20 / 関東信越厚生局】東京都中央区・美容系/クリニック
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消、保険医の登録取消
- 対象種別:医科(クリニック)
- 主な不正理由・手口:
- 監査拒否(正当な理由なき欠席・虚偽診断書の提出)
- 計6回の個別指導を正当な理由なく欠席。欠席理由として提出された診断書について発行元へ照会したところ交付歴がなく(虚偽診断書)、欠席当日に自院で診療を行っていたことが発覚。その後の監査(計3日間)も正当な理由なく出頭せず拒否したため。
- 不正・不当請求額:金額記載なし(監査拒否自体による取消)
- 発端・経緯:個別指導欠席 ➔ 虚偽診断書の発覚 ➔ 監査通知 ➔ 監査拒否 ➔ 取消処分
【R7.3.21 / 関東信越厚生局】東京都羽村市・在宅クリニック(個人・法人)
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消相当(※廃止済み)、保険医の登録取消
- 対象種別:医科(在宅訪問診療)
- 主な不正理由・手口:
- 刑事罰(詐欺罪で有罪確定):開設者医師が診療報酬詐取により逮捕され、懲役2年執行猶予4年の判決が確定。
- 架空請求:実際には行っていない往診や訪問診療を請求。
- 付増請求:実際に行った診療に行っていない診療を付け増して請求。
- 不正・不当請求額:
- 個人開設分:86件 / 15,952,315円
- 法人開設分:30件 / 5,206,173円
- 発端・経緯:内部通報・情報提供 ➔ 逮捕・刑事確定 ➔ 患者調査 ➔ 監査(17日間) ➔ 取消相当処分
【R7.6.6 / 近畿厚生局】大阪府大阪市・皮膚科クリニック
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消、保険医の登録取消
- 対象種別:医科(皮膚科・アレルギー科)
- 主な不正理由・手口:
- 架空請求:実際には受診していない日の保険診療・処方を請求。
- 付増請求:1日しか受診していない患者に対し、複数日受診したとして付け増して請求。
- 不正・不当請求額:
- 不正請求:237件 / 979,387円
- 不当請求:212件 / 181,443円
- 発端・経緯:患者家族からの情報提供(1日しか行っていないのに別日の領収書がある) ➔ 個別指導(従業員が不正を認める) ➔ 監査(6日間) ➔ 取消処分
【R7.9.18 / 関東信越厚生局】千葉県松戸市・歯科クリニック
- 措置の内容:元保険医療機関の指定取消相当(※廃止済み)、保険医の登録取消
- 対象種別:歯科
- 主な不正理由・手口:
- 架空請求および監査拒否(正当な理由なき欠席)
- 受診していない患者の請求疑いで個別指導を開始するも中断。患者調査後に個別指導を再開したところ架空請求が強く疑われたため監査へ移行。度重なる通知にもかかわらず正当理由なく出頭せず拒否。
- 不正・不当請求額:金額記載なし(監査拒否自体による取消)
- 発端・経緯:保険者等からの情報提供 ➔ 個別指導 ➔ 患者調査 ➔ 監査通知 ➔ 監査拒否 ➔ 取消相当処分
【R7.9.18 / 関東信越厚生局】新潟県新発田市・歯科医院
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消、保険医の登録取消
- 対象種別:歯科
- 主な不正理由・手口:
- 付増請求:行った診療に行っていない診療を付け増し。
- 振替請求:実際の診療を点数の高い別の診療へ付け替え。
- 二重請求:自費診療として患者から費用を受領しているにもかかわらず保険請求。
- その他の不当請求:保険適用外のブリッジ等を保険適用として請求。
- 不正・不当請求額:96件 / 3,207,216円
- 発端・経緯:個別指導(技工指示書・納品書とレセプトの不一致) ➔ 患者調査 ➔ 監査(15日間) ➔ 取消処分
【R7.11.14 / 近畿厚生局】京都市左京区・歯科クリニック
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消、保険医の登録取消
- 対象種別:歯科
- 主な不正理由・手口:
- 付増請求:実際には製作していない歯科技工物を請求。
- 振替請求:実際に製作した歯科技工物とは異なる高点数の内容で請求。
- 不正・不当請求額:
- 不正請求:16件 / 546,485円
- 不当請求:20件 / 21,785円
- 発端・経緯:高点数による集団的個別指導 ➔ 翌年個別指導(技工物指示書・納品書とカルテ不一致) ➔ 監査(6日間) ➔ 取消処分
【R7.11.20 / 関東信越厚生局】東京都立川市・在宅クリニック
- 措置の内容:保険医療機関の指定取消相当(※廃止済み)
- 対象種別:医科(在宅訪問診療)
- 主な不正理由・手口:
- 架空請求・付増請求:受診していない診療の請求、実際の診療への付け増し。
- その他の不当請求:保険診療では原則認められない16kmを超える長距離往診の保険請求。
- 不正・不当請求額:3件 / 1,438,073円
- 発端・経緯:支払機関・保険者からの情報提供(未受診・16km超の長距離往診) ➔ 個別指導通知を正当理由なく欠席 ➔ 監査(14日間) ➔ 取消相当処分
【R7.12.24 / 関東信越厚生局】東京都豊島区・クリニック(医師個人)
- 措置の内容:保険医の登録取消
- 対象種別:医科(クリニック)
- 主な不正理由・手口:
- 監査拒否(正当な理由なき欠席)
- 受診患者・保険者から「診療日数や内容が実際より多い」と情報提供があり個別指導実施。患者調査後に不正請求が強く疑われたため監査(計3日)を実施するも、出頭せず拒否したため。
- 不正・不当請求額:金額記載なし(監査拒否自体による取消)
- 発端・経緯:患者・保険者からの情報提供 ➔ 個別指導 ➔ 患者調査 ➔ 監査通知 ➔ 監査拒否 ➔ 登録取消処分
【R7.12.25 / 関東信越厚生局】東京都世田谷区・クリニック
- 措置の内容:元保険医療機関の指定取消相当、元保険医の登録取消相当(※辞退・抹消済み)
- 対象種別:医科(クリニック)
- 主な不正理由・手口:
- 監査拒否(正当な理由なき欠席)
- 複数患者から医療費通知の受診日数相違について通報があり個別指導(カルテ記載の信憑性疑義)。患者調査後に監査(計5日)を実施したが、度重なる通知にもかかわらず正当な理由なく出頭しなかったため。
- 不正・不当請求額:金額記載なし(監査拒否自体による取消)
- 発端・経緯:患者からの情報提供(医療費通知とのズレ) ➔ 個別指導 ➔ 患者調査 ➔ 監査通知 ➔ 監査拒否(辞退逃げ) ➔ 取消相当処分
事例から見えてくる「一発アウト」の共通点とまとめ
令和7年の公表事例を分析すると、行政処分(指定取消・登録取消)に至るプロセスには明確なパターンが存在します。現場管理においては以下の3点に特に留意する必要があります。
- 発端の多くは「患者・保険者からの通報(医療費通知)」 「受診していない日の領収書がある」「医療費通知の受診日数が多い」といった患者や家族からの指摘が厚生局へ寄せられ、個別指導・監査へ発展するケースが目立ちます。
- 「指導・監査の拒否」は金額に関わらず即取消 不正請求の金額が少額であっても、また不正の証明が完了していなくても、正当な理由なく指導や監査を出頭拒否・欠席した段階で健康保険法違反となり、指定取消・登録取消処分が下されます。
- 廃止・辞退による処分回避は不可能 途中で診療所を閉院・廃止したり保険医登録を辞退したりしても、手続きは「指定取消相当」に切り替わり、不正の事実や名前、理由が永続的に公表されます。
【出典・参考資料】
本ページに掲載している行政処分・指定取消相当等の事例データは、厚生労働省および各地方厚生局が公式に発表・報道提供(プレスリリース)した公表情報に基づき作成しています。
- 厚生労働省 地方厚生局一覧
- 北海道厚生局(保険医療機関等の取消処分等)
- 東北厚生局(保険医療機関等の指定の取消相当及び保険医の登録の取消しについて)
- 関東信越厚生局(保険医療機関等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて)
- 東海北陸厚生局(保険医療機関等及び保険医等の行政処分について)
- 近畿厚生局(保険医療機関等の指定の取消し及び保険医の登録の取消しについて)
- 中国四国厚生局(保険医療機関等及び保険医等の行政処分について)
- 四国厚生支局(保険医療機関等及び保険医等の行政処分について)
- 九州厚生局(保険医療機関等及び保険医等の行政処分について)
※掲載データは公表された確定情報(公文書・プレスリリース)を基に、個人のプライバシー保護および実務上の要約・分析を目的として再構成したものです。
